ロングアイランドシティの Vernon Blvd 沿いにある Safir Mediterranean は、トルコ料理を中心にしたレストランである。ニューヨークには地中海料理の店が多いが、ここはもう少しはっきりとトルコの食卓に寄っている。ケバブ、ピデ、ラフマジュン、メゼ、焼きたてのパン。メニューを見ていると、肉料理の力強さと、前菜の細かい楽しさが同じくらい並んでいる。

 
 
 

Safir Mediterranean
47-31 Vernon Blvd, Queens, NY 11101
https://safir-mediterranean.com/
https://maps.app.goo.gl/aWLiLdZmEd2dx7tw9

 
 
 

この日まず印象に残ったのは、いくつかの冷たい前菜 Mixed Appetizer。フムス、ババガヌーシュ、ムハンマラ、ハイダリ、ピンク・スルタンあたりだろうか。白い小皿に少しずつ盛られた前菜は、それぞれ色も香りも違う。ひよこ豆、焼きなす、ヨーグルト、ビーツ、赤ピーマン、くるみ、にんにく、オリーブオイル。名前だけ並べると健康的だが、実際にはもっと酒のつまみのような味がする。
特にムハンマラの赤さはよかった。赤ピーマンとくるみ、ザクロの甘酸っぱさが合わさったような、少し濃くて、少し重い味である。ハイダリはヨーグルトにニンニクやディルを混ぜたもので、こちらは冷たく、やわらかい。ピンク・スルタンはビーツの色が鮮やかで、皿の上にあるだけで急に食卓が明るくなる。トルコの前菜は、ひとつひとつは小さいのに、並ぶと急に強い。小皿が集まると、食卓が少しずつ騒がしくなる。

そこに出てきたのが、大きく膨らんだ Ballon Bread である。名前の通り、風船のように膨らんだパンで、表面には焼き目とごまがついている。これがテーブルに置かれると、それだけで少し楽しい。料理というより、まず物体としてうれしい。切る前のパンが、食卓の上でひとつの大きな期待のように膨らんでいる。
このパンをちぎって、前菜につけて食べる。フムスをすくう。ムハンマラをのせる。ヨーグルトの前菜を少しつける。すると、前菜がただの小皿ではなくなる。パンがあることで、全部が手で食べる料理に変わる。皿の上のものを、少しずつ自分の方へ引き寄せていく感じがある。こういう時、パンは料理の脇役ではなく、食卓の道具であり、橋のようなものなのだと思う。

メインとして写っているのは、Beyti Kebab。挽肉のケバブをラヴァシュで巻き、輪切りにして並べ、トマトソースとヨーグルトをかけた料理である。見た目はかなり整っている。銀の皿の上に、巻かれた肉とパンが規則正しく並び、赤いソースが下に流れている。横には焼いたトマトが添えられている。
食べてみると、これはかなり完成された形式の料理だと思う。肉、パン、ヨーグルト、トマトソース。全部が一口の中に入る。ケバブをそのまま食べるよりも、少しやわらかく、少し複雑になる。肉の香ばしさをラヴァシュが受け止め、トマトソースが酸味を足し、ヨーグルトが全体を丸くする。肉料理なのに、ソースとヨーグルトのせいで重さが一方向に行きすぎない。

この日は酒も飲んだ。写真に写っているのはラク(Rakı)という地酒。グラスのEfesはトルコビールの名前。
ラク(Rakı)はかなり別物である。アニスの香りがするトルコの蒸留酒で、水を入れると白く濁る。いわゆる「ライオンのミルク」と呼ばれる酒だ。初めて飲むと、酒というより香りの強い儀式のように感じるかもしれない。甘いわけではないのに、香りは甘い。強いのに、食事と合わせると不思議と進む。前菜を食べ、パンをちぎり、ケバブを口に入れ、その合間にラクを飲むと、食卓の空気が少しだけトルコの方へ傾く。

Safir Mediterranean は、強烈な一皿で驚かせるというより、前菜、パン、肉、酒が揃った時に楽しくなる店だと思う。ムハンマラの赤、ピンク・スルタンの色、膨らんだパン、ラヴァシュに巻かれたケバブ、白く濁ったラク。それぞれの要素がかなりわかりやすく、テーブルの上でにぎやかに並ぶ。
ロングアイランドシティで、少ししっかりトルコ料理を食べたい時。特に、前菜をいくつか並べて、パンをちぎりながら、ケバブと酒まで楽しみたい時にはちょうどいい。料理を一品ずつ理解するというより、テーブル全体を食べるような店である。

食後に思い返すと、一番記憶に残っているのは、あの大きく膨らんだパンかもしれない。トルコ料理は肉の印象が強いが、実際にはパンと前菜がかなり強い。あのパンがあるだけで、食事は少し祝祭になる。Safir Mediterranean は、その感じを気軽に味わえる店だった。