トライベッカのTara Kitchenは、モロッコ料理の店ではあるけれど、入ってみると、いわゆる“異国料理店”というより、少し都会的に整えられたレストランだった。
天井が高く、席の間隔も比較的ゆったりしていて、照明は赤く、テーブルには少し華やかな光が落ちている。モロッコ料理のスパイスや煮込みの濃さを残しながら、ニューヨークのレストランとして食べやすく整えている店、という印象だった。

 

Tara Kitchen Tribeca
253 Church St, New York, NY 10013
https://maps.app.goo.gl/27R2rdDwUSiEtP9A6

 
 
 

この日食べたものは、ラムやひよこ豆、じゃがいもを使った料理が中心だった。モロッコ料理というと、タジン鍋やクスクスを思い浮かべるけれど、ここで印象に残ったのは、もっと素朴で、スパイスと肉の旨味がじわっと出てくるような皿だった。

まずよかったのが、ラムのミートボール。小さめのミートボールが、プリザーブドレモンとオリーブを使ったソースの中に並び、まわりにはピタが添えられている。ラムの香りはあるけれど強すぎず、ソースにはレモンの酸味と塩気があって、ただ重い肉料理では終わらない。ピタをちぎってソースにつけながら食べると、スパイスと肉の旨味が少しずつ染みてくる。モロッコ料理らしい複雑さはあるけれど、前菜としてかなり食べやすい一皿だった。

ひよこ豆の料理も印象に残っている。クミンやパプリカの香りをまとったひよこ豆が小さな器に入り、こちらもピタと一緒に出てきた。ひよこ豆は地味な食材だけれど、スパイスが入ると急に存在感が出る。豆のほくっとした食感と、油、香り、塩気。ワインを飲みながら少しずつ食べるにはちょうどいい。
こういう料理は、主役というより、テーブルの上にあると食事のリズムを作ってくれる。肉を食べる合間に豆をつまみ、ソースをピタで拾い、またワインを飲む。モロッコ料理の面白さは、こういう“ソースを残さず食べたくなる感じ”にもあるのだと思う。

そして、メインとして印象に残ったのがラムとじゃがいもの煮込み。
おそらく Tangia 系の料理だったと思う。肉はしっかり煮込まれていて、じゃがいもにもソースの味が入っている。サフランやレモンの香りがあるせいか、見た目ほど重くはない。けれど、食べ終わるとかなり満足感がある。ラム、じゃがいも、スパイス、煮汁。派手さよりも、鍋の中で時間をかけて味がまとまったような料理だった。

この日のTara Kitchenは、モロッコ料理の代表料理を一通り試したというより、肉、豆、パン、スパイスを囲んで食べた記憶として残っている。赤い灯りのテーブルに、ラムのミートボール、ひよこ豆、ラムとじゃがいもの煮込み。どれも華やかすぎず、でも香りと味はしっかりある。
店内は広めで、席の間隔も比較的ゆったりしている。モロッコ風の装飾や赤い照明はあるけれど、過剰にテーマパーク的ではなく、トライベッカのレストランとして落ち着いている。スタッフもフレンドリーで、料理の説明もしてくれるので、モロッコ料理に慣れていなくても入りやすい。Tara Kitchenは、ひとりでさっと食べる店というより、何人かで料理を分けながら、ピタでソースを拾い、ワインやカクテルと一緒にゆっくり食べるのに向いていると思う。モロッコ料理のスパイスの強さと、ニューヨークのレストランらしい食べやすさ。その間にある店だった。