ジョージア料理を食べに行く、という予定は、ニューヨークに住んでいても意外と日常には入り込んでこない。
けれどWest Villageを歩いていると、ふと「今日はよく知らない国の料理を食べたい」と思う日がある。Ubaniは、そういう時にちょうどよい、小さな入口のような店だった。
Ubaniは、ジョージア語で「近隣」や「地域」を意味するらしい。店名の通り、レストランというより、近所にある少し温かい食堂のような雰囲気がある。木目調のインテリアと観葉植物、こじんまりした店内。派手な特別感というより、知らない料理を少し安心して試せる空気がある。

 
 
 

Ubani – West Village
37A Bedford St, New York, NY 10014
https://maps.app.goo.gl/aNqj4Zed6W71Wnm56

 
 
 

ジョージア料理というと、まずハチャプリやヒンカリを思い浮かべる。舟形のパンにチーズと卵をのせた料理や、肉汁の入った大きな餃子。初めてジョージア料理を食べる時には、たぶん一番わかりやすい入口だと思う。けれど、West VillageのUbaniで食べたものは、少し違っていた。

この日、まず印象に残ったのは Ubani Salad。ブッラータ、トマト、ハーブ、そして jonjoli というジョージアの発酵野菜が入ったサラダで、見た目はかなり軽やかだった。白いブッラータがのったサラダは一見イタリア料理のようにも見えるけれど、食べてみるとハーブや酸味、発酵した野菜の気配があって、普通のブッラータサラダとは少し違う。チーズのミルキーさだけでは終わらず、ところどころに青い香りや酸味があって、ジョージアワインと一緒に食べると急に輪郭が出てくる。

一緒に飲んだのは、ジョージアのアンバーワイン。白ワインというより、紅茶や蜂蜜に近い琥珀色をしていて、グラスに入るだけで少し特別な感じがある。味もすっきり軽いというより、皮や発酵のニュアンスがあり、ジョージア料理のハーブやナッツ、発酵した野菜と相性がいい。
土鍋のような器で出てきた Ajapsandali もよかった。ナス、トマト、ピーマン、にんにく、ハーブを使った野菜の煮込みで、フランス料理のラタトゥイユにも少し似ている。ただ、ハーブの香りや全体の素朴さは、もっと食卓に近い。添えられたパンやきゅうりと一緒に食べると、野菜の甘さと酸味が少しずつ広がる。

もう一つ印象的だったのが、Beef Chakondrili with Tashmijabi。
牛肉をハーブやスパイスでしっかり味付けした料理で、その下に Tashmijabi というジョージア風のチーズ入りマッシュポテトが敷かれていた。写真で見るとマッシュポテトのように見えるけれど、食べるともっとねっとりしていて、普通のポテトの軽さとは少し違う。チーズが混ざっている分、なめらかで重みがあり、上にのった牛肉の濃い味をしっかり受け止める土台のようだった。

振り返ると、この日はジョージア料理の代表的な名物を一通り食べたというより、少し変化球の食事だったのかもしれない。
ハチャプリやヒンカリではなく、サラダ、野菜の煮込み、チーズ入りのポテト、アンバーワイン。けれど、それがかえってUbaniらしかった気もする。
ニューヨークには、いろいろな国の料理がある。でも、その国のことをよく知らないまま、まず料理から入っていくことがある。Ubaniは、ジョージアという国の食卓に、少しだけ静かに触れられる店だった。派手な名物料理を食べるだけでなく、ハーブや発酵、酸味、ワインのある食事として、ジョージア料理を知る入口になると思う。

※この記事は2024年来訪時のものになります。現在Ubaniはビストロなど複数店舗を抱え、メニューも更新されているようです。もっと本格ビストロ風の店になっているかもしれません